十分でのランタン上げを体験したのち、私達夫婦が向かったのは九分。
だって、台湾旅行で「必ず名前が挙がる場所」といえば、やはり九份(きゅうふん)ですからね。
赤い提灯が連なる坂道、迷路のような細い路地、そしてどこか懐かしさを感じる街並み。
初めての台湾でも、リピーターでも、多くの人が惹きつけられる理由が、九份には詰まっています。
九份はもともと、金鉱の発見によって栄えた山あいの町。
日本統治時代には多くの日本人技師も暮らし、当時の建物や街並みの面影が、今も所々に残っています。
金鉱が閉山したあとは一時寂れてしまいましたが、映画の舞台を思わせる独特の景観が再評価され、今では台湾屈指の人気観光地として、国内外から多くの人が訪れる場所となりました。
そんな九份を、今回の台湾旅行で奥さまと二人、初めて歩いてみることにしました。
正直なところ、出発前は「人が多そうだな」「坂道や階段が多くて大変かな」と、60代夫婦としては少し構えていたのも事実です。
それでも実際に足を踏み入れてみると、観光地としてのにぎわいの中に、どこか昭和の下町を思わせるような懐かしさがあり、気がつけば人の流れに身を任せながら、九份の空気を楽しんでいました。
この日は、奥さまと無理のないペースで、立ち止まり、眺め、味わいながら九份を散策。
「人気の理由」が少しずつ腑に落ちていく、そんな時間となりました。
提灯が連なる細い通路、九份らしさに包まれる

路線バスよりも快適に、かつ、瑞芳駅から10分ほどで到着するのでUberタクシーは便利です。

観光客でにぎわい、ここから一気に「九份の世界」が始まります。
この九分入り口のセブン・イレブンが九分待ち合わせスポットとして有名みたいです。

あまたの観光客でごった返しです。
食べ歩きも九份の楽しみ、屋台をハシゴし九份傳統魚丸へ


アッツアツの揚げたてに餡がかかってて漬物もついてます。

とってもホクホクして激熱で美味。
どこか懐かしい日本人好みのお味です。

ここは創業数十年を誇る、魚団子(魚丸)の老舗です。


その他にも魅力的なメニューがありイートインスペースもあるので中へ。

自家製の魚団子は驚くほどプリプリした弾力があり、中から魚の旨みがじゅわっと溢れ出します。

九分ならではの「伝統の味」を肌で感じることができました。
食後の九分、終わらない坂道と階段の試練

ここからが九分の真骨頂。
待ち構えていたのは、どこまでも続く急勾配の坂道と石段でした。
この高低差はなかなかのハードワークです。
道幅が狭い上に、次から次へとやってくる観光客の波。
奥さまと足元を確認しながら、一段、また一段と慎重に踏み締めていきます。

だんだん上に上がるにつれてお店はなくなっていきます。
でもこの絶景は、自分の足で一歩ずつ登った者にしか味わえない特権ですね。

ここは関聖帝君、つまり三国志の英雄・関羽を祀っているお宮。
商売の神様としても有名ですが、今の私たち夫婦にとっては「ここまでよく登ってきたな」と迎えてくれているように感じました。

いま来た道を今度はひたすら降りていきます。
夫婦たび案内人
九分散策に疲れた足を癒やすべくカフェでかき氷

九分からの帰りはPM7時にKlookで乗合バスを予約していたのでピックアップまでには時間がありますから近くのカフェに。

九分を歩く多くの観光客が目にする、歴史的な建物のお店です。
ここは1989年の大ヒット映画『悲情城市』のロケ地にもなった場所らしく、50年代の客棧(宿場)を思わせるレトロな佇まいに、思わず吸い込まれるように入店しました。

心宇食堂(しんうしょくどう)のメニューとイザ実食!

タロイモ団子のあんみつみたいな感じでしょうか?




今回選んだのは、最近台湾で非常に評価の高い「バックスキン(Buckskin)」の瓶ビール。
ドイツの伝統的な製法にこだわって台湾で作られている、本格派のクラフトビールです。
一般的な台湾ビールよりも麦の香りが非常に濃厚で、一口飲むとコクのある旨みが口いっぱいに広がります。
それでいて後味はスッキリしています。

私はバックスキン瓶ビールと九份の名物スイーツ「九份芋圓(ジョウフェンユーユェン)。
階段でヤられた足腰を癒やします。

甘い物はつかれた体にナイスゥ~♬

九分は坂道を登り終えると…もうすることがない…

でも足が歩くことを拒否しています(笑)


でもピックアップPM7時なのでそれまでは九分にいなきゃならない。
とはいえ、階段を降りたら再び登る元気も気力もない…

最古の茶藝館といわれる九份茶坊へ。
日が落ちてランタンが灯るまでこのカフェで粘ることにしました。

運ばれてきた茶器セットを前に、店員さんが一杯目を丁寧に淹れてくれます。
小さな茶杯から立ち上る烏龍茶の香りは、驚くほど高く、深く、鼻を抜けていきました。
二杯目からは自分たちで。奥さまと交代でお湯を注ぎ、茶葉がゆっくりと開いていく様子を眺める時間は、最高のリラックスタイムです。
台湾でお茶を頼むとお湯を無限にサービスしてくれるので長い休憩には最適だと。


いよいよランタンに明かりが灯りはじめる時間です。
九分のランタン灯りはノスタルジーを感じさせる

昼間は少し古びて見えた木造の建物や石畳が、ランタンの柔らかな光に照らされて、まるで映画のセットのような、あるいは別世界に迷い込んだような表情を見せ始めました。

何十、何百というランタンが縦横に連なり、薄明かり空とのコントラストが息を呑むほど美しい。
奥さまも「ずっと見ていられるね」と、何度もシャッターを切っていました。

奥さま
夫婦たび案内人
台湾の「ダーパオ(打包)」文化!天天利美食坊の牡蠣オムレツやら唐揚げやら


小ぶりのプリッとした牡蠣がゴロゴロ入っていて、生地はモチモチのぷるぷる。
上からかかっている甘酸っぱい特製ソースが、卵と牡蠣の旨みを引き立て「かきおこ」の香ばしい焦げ目が、食欲をさらに加速させてくれました。

天天利美食坊の魯肉飯は、甘辛く煮込まれた肉そぼろがたっぷりかかっているのが特徴。
そこに、絶妙な焼き加減の「半熟目玉焼き」をトッピングし、箸で黄身を崩し、濃厚なタレとご飯に絡めて口に運べば、もう言葉はいりません。

台湾の国民的グルメである「塩酥鶏(台湾風からあげ)」の専門店です。

スパイシーな香りが鼻を抜け、一口食べるともう手が止まりません。


台湾の「ダーパオ(打包)」文化とは一言で言えば「食べ残した料理や、持ち帰り用の料理をパッキングしてもらうこと」です。
台湾では高級レストランから街角の食堂(小吃店)まで、ほぼすべてのお店で対応してくれます。
「心宇食堂」のようなお店で、もし美味しい料理が少し残ってしまっても、「打包(ダーパオ)!」と伝えれば、手際よく袋や容器に詰めてくれます。
奥さま
夫婦たび案内人
【旅の終わりに】十分から九分の灯火、台北の夜食に酔いしれる
九分の「終わらない階段」との格闘も、今となっては心地よい思い出です。
聖明宮から見下ろしたパノラマや、九份茶坊で静かに流れた時間は、慌ただしい日常を忘れさせてくれる特別なものでした。
何よりも忘れられないのは、夕闇に溶けていく街並みにポッと灯った、あの無数の赤いランタンの光です。
幻想的な緋色の輝きは、迷路のような路地を優しく包み込み、どこか懐かしく、そして温かい気持ちにさせてくれました。
奥さまと二人でその光の中を歩いた時間は、今回の夫婦たびの、もっとも美しい宝物になりました。
台北のホテルに戻り、夜食として広げたのは、西門町で「ダーパオ(打包)」してきた戦利品です。
袋を開けた瞬間に広がる「台湾塩酥鶏(からあげ)」のスパイシーな香りと、ニンニクの刺激。
九分の余韻に浸りながら、キンキンに冷えたビールで乾杯。
コクのある本格的な麦の旨みが、揚げたてのからあげと完璧なマリアージュを奏でます。
「ちょっと買いすぎたかな?」と言いながらも、二人で竹串をつつく。
この気取らない、台湾の日常に溶け込んだような「ダーパオ文化」のおかげで、ホテルの部屋が私たちだけの最高のプライベート・レストランになりました。
十分でのランタン上げ、そして九分の静謐なランタンの美しさと、西門町の活気あふれる夜食。
対照的な景色を味わい尽くし、お腹も心もこれ以上ないほど満たされて、台北の3日目の夜はゆっくりと更けていきました。
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